ICAO
国際民間航空機関(ICAO: International Civil Aviation Organization)は、国際連合の専門機関として、1944年に採択された国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づき設立されました。ICAOをイカオ又はアイカオと呼びますが、英語圏ではアイケーオーと呼んでいます。ICAOの本部はカナダのモントリオールです。現在、193か国が加盟しています。ちなみに、日本は1953年に加盟しました。

ICAOの目的
ICAOは、国際民間航空が安全で規律正しく発展すること、国際航空運送が安全かつ健全に、能率的かつ経済的に行われること、機会均等に基づき国際航空会社が運営されることなどを実現するため、国際協力を図ることを目的としています。 シカゴ条約第44条には、ICAOの目的が具体的に規定されています。すなわち、ICAOは、次の(1)~(9)の事項を実現するため、国際航空の原則や技術を発展させるとともに、国際航空運送の計画や発展を促進することを目的としています。

(1)世界を通じて国際民間航空の安全と規律正しい発展を確保すること、(2)平和的な目的のために航空機の設計技術や運航を奨励すること、(3)国際民間航空のための航空路、空港、航空保安施設の発展を奨励すること、(4)安全、健全、能率的、経済的な航空運送に対する世界の国々の国民の要求に応じること、(5)不合理な競争によって生じる経済的な浪費を防止すること、
(6)加盟国の権利が十分に尊重され、すべての加盟国が国際航空会社を運営するための公正な機会を確実に持つこと、(7)加盟国間の差別を回避すること、(8)国際航空における飛行の安全を促進すること、(9)国際民間航空術のすべての面の発展を広く促進すること。そして、この目的を達成するため、ICAOは国際ルールなどの作成に取り組んでいます。
ICAOの国際ルール等
ICAOの国際標準と勧告方式はシカゴ条約の附属書として作成されました。それには次の19分野があります。(1)技能証明、(2)航空規則、(3)気象、(4)航空図、(5)計測単位、(6)運航安全、(7)登録、(8)耐空性、(9)空港での出入国、(10)通信装置、(11)交通管制の運用、(12)遭難救助、(13)事故調査、(14)飛行場設計、(15)航空情報の収集・伝達の方法、(16)環境保護、(17)航空保安、(18)危険物輸送、(19)安全管理

また、ICAO関係の主な国際条約は次の(1)~(12)とおりです。(1)航空機に対する権利の国際的承認に関する条約(ジュネーブ条約)は1953年に発効しました。同条約は、国際航空に供される航空機の移動の確保と航空機に対する権利との調整を諮ることを目的として、航空機に対する権利及び航空機の救難と保存に関する債権の優先的取り扱いなどを定めています。
(2)外国航空機が地上の第三者に引き起こした損害に関する条約(ローマ条約)は1958年に発効しました。同条約は、国際航空において航空機が地上の人及び財産に対して引き起こした損害に対する航空機の運航者と所有者の責任を定めています。(3)1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についての規則の統一に関する条約を改正するための議定書(ヘーグ議定書)が1963年に発効しました。
同議定書は、1929年署名の条約を国際航空の発達に即応するように改正したものです。同条約は、国際航空運送に使用される証券及び運送人の責任に関して統一的に規制することを目的としたものです。(4)契約運送人以外の者が行う航空運送についての規則の統一に関するワルソー条約を補足する条約(グァダラハラ条約)が1964年に発効しました。
同条約は、ワルソー条約の適用を受ける国際航空運送の全部又は一部が契約運送人以外によって行われた場合の契約運送人の責任分担及び両運送人の相互責任を定めています。(5)航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約(東京条約)は1969年に発効しました。同条約は、航空機内で行われた犯罪の裁判権及びこれらを取り締まるための機長の権限などを定めています。
(6)航空機の不法な奪取の防止に関する条約(ヘーグ条約)は1971年に発効しました。同条約は、航空機の不法奪取などを犯罪として、その犯人の処罰及び引き渡しなどを定めています。(7)民間航空の安全に対する不法行為の防止に関する条約(モントリオール条約)は1973年に発効しました。同条約は、民間航空の安全に対する一定の不法行為を犯罪として、その犯人の処罰及び引き渡しなどを定めています。

(8)1971年9月23日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書(空港不法暴力行為防止議定書)が1989年に発効しました。この議定書は、国際空港の安全を損なう一定の暴力行為を条約上の犯罪として、裁判権の設定義務などについて定めています。
(9)1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についての規則の統一に関する条約を改正する第一追加議定書(モントリオール第一追加議定書)が1996年に発効しました。同追加議定書はワルソー条約の金フランをSDR表示に改正するものです。(10)1955年9月28日にヘーグで作成された1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についての規則の統一に関する条約を改正する第四追加議定書(モントリオール第四追加議定書)が1998年に発効しました。

SDRは、Special Drawing Rightsの略で、国際通貨基金(IMF)に加盟する国が持つ「特別引き出し権」のことだよ!SDRの詳しい内容は、「【IMF(国際通貨基金)】の目的、組織、業務などをわかりやすく解説!」を読んでね!
この追加議定書は、郵便物に関する規定の改正及び貨物運送の簡素化のため、ヘーグ議定書によって改正されたワルソー条約を更に改正するものです。(11)可塑性(かそせい)爆薬の探知のための識別措置に関する条約(可塑性爆薬探知条約)は1998年に発効しました。同条約は、可塑性爆薬に探知剤を添加するなどの措置を義務づけたものです。

(12)国際航空運送についての規則の統一に関する条約(モントリオール条約)は2003年に発効しました。同条約は、国際航空運送における契約当事者の権利義務関係、運送人の責任、損害賠償の範囲などの規則を定め、従来の関連条約などの内容を更新及び統合するものです。

日本は次の条約を締結しているよ!
(1)1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についての規則の統一に関する条約を改正するための議定書(ヘーグ議定書)、(2)航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約(東京条約)、(3)航空機の不法な奪取の防止に関する条約(ヘーグ条約)、(4)民間航空の安全に対する不法行為の防止に関する条約(モントリオール条約)、(5)1971年9月23日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書(空港不法暴力行為防止議定書)、(6)1955年9月28日にヘーグで作成された1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についての規則の統一に関する条約を改正する第四追加議定書(モントリオール第四追加議定書)、(7)可塑性(かそせい)爆薬の探知のための識別措置に関する条約(可塑性爆薬探知条約)、(8)国際航空運送についての規則の統一に関する条約(モントリオール条約)
ICAOの組織
ICAOは、総会(Assembly)、理事会(Council)、事務局(Secretariat)で構成されています。総会は、全加盟国の代表で構成される最高意思決定機関で、通常、3年ごとに開催されます。総会では、理事国の選出、予算の採択、シカゴ条約の改正の承認などの政策事項を決議します。理事会は、3年ごとに総会で選出される36か国で構成される執行機関です。理事国は3つのカテゴリーに分けて選出されます。

すなわち、理事国は、第1カテゴリー(航空運送において最も重要な11か国)、第2カテゴリー(国際民間航空のための施設の設置に最大の貢献をする12か国)、第3カテゴリー(その国を指名すれば世界のすべての主要な地理的地域が理事会に確実に代表されることになる13か国)に分けて選出されますが、選出されてからはカテゴリーの区別なく、活動することになります。
理事会は、総会への年次報告、理事会議長や事務局長の任命、シカゴ条約違反の勧告、国際標準と勧告方式の採択、条約附属書の採択と改正、航空に関する情報の収集や審査などを行います。理事会には、航空委員会、航空運送委員会、法律委員会、財政委員会、人事委員会などの複数の補助機関があります。その中で、航空委員会は理事会を支援する中心的な常設委員会です。

航空委員会は、3年ごとに加盟国が指名する者の中から理事会が任命する19人の委員によって構成されています。そして、航空委員会は、シカゴ条約附属書の改正などの勧告を行うとともに技術的な助言を行います。航空委員会の下には専門家による多くのパネル会合があります。
事務局には、事務局長の下に航空技術局、航空運送局、法律・対外関係局、技術協力局、総務局という5つの局があります。事務局は、総会決議や理事会決定の実施を支援、監視、報告したり、決定すべき事項を提案したりします。
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