【IMF(国際通貨基金)】の目的、組織、業務などをわかりやすく解説!

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国際・政治

IMFの目的

IMFはImpossible Mission Force(映画ミッション:インポッシブルで主役を演じるイーサン・ハント=トム・クルーズが所属する不可能任務部隊)の略称ではありません。IMFとはInternational Monetary Fund(国際通貨基金)の略称です。

IMF条約の第1条には次のように目的が規定されています。                   (1) IMFは、国際通貨問題について協議や協力を行うため、通貨の国際協力を促進する。

(2) IMFは国際貿易の拡大や均衡のとれた増大を促進する。これにより、IMFは、すべての加盟国が、経済政策の主要な目標として、高水準の雇用や実質所得を促進・維持すること、生産資源を開発することに寄与する。

(3) IMFは、為替の安定を推し進め、加盟国間において秩序ある為替の取極めを維持して、加盟国が為替(レート)を競争的に減価することを防止する。

(4) IMFは加盟国の間で経常取引の多国間支払制度を確立することを支援する。また、IMFは国際貿易の成長を阻害する為替制限を撤廃することに貢献する。

(5) IMFは適当な保障の下で加盟国が一時的にIMFの一般資金を利用できるようにする。これにより、IMFは、加盟国が、国内的又は国際的な繁栄を破壊するような措置に訴えることなく、国際収支の失調を是正する機会を提供する。

IMFは、上記(1)から(5)の規定に従い、加盟国の国際収支の不均衡が続く間を短縮してその程度を軽減する。IMFは、そのすべての政策及び決定についてこれらの規定に定める目的を指針としなければならない。

すなわち、IMFは世界の経済・金融の状況や加盟国の為替政策などを監視しています。そして、加盟国が国際収支の著しい悪化に陥ったときには、それを是正する機会を提供するため、IMFは加盟国に対し融資として資金を提供します。

このような方法によって、IMFは、加盟国の貿易を促進して国際貿易の拡大を図り、すべての加盟国が雇用と実質所得を高水準まで増加させることを目指します。また、IMFは、加盟国が為替相場を競争的に引き下げることを防止します。

そして、IMFは、加盟国間における経常取引の多国間支払制度を確立することを支援するとともに、国際貿易の成長を阻害する為替制限を撤廃することに貢献します。

IMFの組織

IMFは国際連合の専門機関で本部は米国のワシントンにあります。現在、190か国がIMFの加盟国です。IMFには総務会、理事会、専務理事という組織があります。また、国際通貨金融委員会と世界銀行・IMF合同開発委員会が設置されており、総務会に対して助言などを行います。

総務会(Board of Governors)は、IMFの最高意思決定機関で各加盟国を代表する総務(1名)と総務代理(1名)から構成されています。通常、各加盟国の財務大臣又は中央銀行総裁が任命されます。

日本では財務大臣が総務に、日本銀行総裁が総務代理に任命されています。総務会における各加盟国の議決権は1国1票ではありません。各加盟国にはクォータ(IMFに対する出資割当額)に比例した票数が与えられます。

総務会の決定は多数決で行われます。総務が不在の場合には総務代理が投票することができます。 通常、総務会はIMFと世界銀行(World Bank)の合同年次総会において開催されます。

総務会は、多くの事項を理事会に任せていますが、新規加盟国の承認、加盟国に対する脱退要求、クォータの決定、SDR(特別引出権)の配分、IMF協定の改正などの重要事項については決定権を行使しています。※SDRについては後述します。

IMFは各加盟国に対してその経済規模などに応じて出資を割り当てているけど、その出資割当額に比例して、投票数や融資限度額が定められているんだ!

クォータ(出資割当額)は、各加盟国のGDP(国民総生産)や外貨準備高などの経済力の大きさを基準にして設定されているから、通常5年ごとに見直しを行うよ!

理事会(Executive Board)は24名の理事から構成されています。理事の選任は総務会で加盟国による投票で行います。ただし、クォータの上位5か国は無投票で理事を任命できます。

理事会は、総務会から多くの事項について任せられており、通常業務の執行や監督を行っています。すなわち、理事会の議長である専務理事(Managing Director)がIMF職員の長として業務の執行を行っています。

専務理事は、理事会で選出され任期は5年ですが、再選可能です。1名の筆頭副専務理事と3名の副専務理事が専務理事を補佐しています。副専務理事は専務理事の任命提案に基づき理事会で承認されます。

国際通貨金融委員会(IMFC: International Monetary and Financial Committee)と世界銀行・IMF合同開発委員会(DC: Development Committee)という2つの大臣級委員会(Ministerial Committees)があります。

国際通貨金融委員会は、 国際間の決済に用いられる国際通貨や金融取引を円滑に行うための金融システムに関する問題、IMFの活動などについて協議して、総務会に対し助言や報告を行います。そして、委員会の意見をまとめた共同声明を出します。

世界銀行・IMF合同開発委員会は、新興国や開発途上国における開発などの問題について協議して、総務会に対し助言や報告を行います。そして、委員会の意見をまとめた共同声明を出します。

IMFの業務

IMFは加盟国によって運営され、加盟国に対して責任を負っています。すなわち、IMFは、国際通貨制度の安定を維持して経済危機を防ぐため、加盟国に対してサーベイランス(政策監視)を行い、必要に応じ、政策の調整などについて助言を行います。

そして、IMFは、加盟国からの出資金を財源にして、国際収支が著しく悪化した加盟国に対し融資を行い、債務の支払いなどのための外貨準備高を支援します。また、IMFは加盟国の要請により経済や金融の専門家を派遣して技術支援などを行います。

(1) サーベイランスはIMF協定第4条に規定されています。そのため、4条協議とも言います。具体的には次のとおりです。IMF代表団が定期的に(通常年1回)加盟国を訪問して経済・金融政策などについて調査・評価を行います。

そして、政府や中央銀行などの代表者と協議して、必要に応じて適切な政策調整などについて助言を行います。協議の結果は、IMF代表団によって報告書としてまとめられてIMFの理事会に提出されます。

理事会では報告書に対する見解が作成されます。そして、その要旨は対象の加盟国に送られます。また、報告書はIMFよって公表されます。このようなサーベイランスは数年ごとに見直しが行われます。ちなみに、加盟国はIMF協定によってサーベイランスに協力する義務があります。

また、IMFは、サーベイランス活動として、世界や各地域の経済状況をモニタリングして加盟国の政策が世界経済などに与える影響を分析します。経済状況や分析結果については「世界経済見通し」や「国際金融安定性報告書」として定期的に公表されています。  

(2) IMFは、融資によって、加盟国がその外貨準備高を再建し通貨の安定を図ること、そして輸入の支払いを続けて経済成長を遂げることを支援します。また、IMFの融資は、加盟国が経済の安定と成長に必要とする政策調整を促進する余裕を提供します。

加盟国には市場ベースの金利で融資を受ける資格があります。また、加盟国は自国のクォータ(IMFに対する出資割当額)に比例して融資を受けることができます。この融資は、加盟国が国際収支の著しい悪化に陥ったとき、それを改善するための支援を想定しています。

一方、加盟国の経済状況やニーズに応じた融資方法があります。例えば、加盟国のうち低所得国などを対象としたゼロ金利の融資があります。この融資は、該当する加盟国が気候変動やパンデミックなどの問題に対応できるような体制を構築するとき、それに対する緊急支援を想定しています。

そして、世界的な経済危機などに迅速に対応するため、IMFは、利用限度額の拡大、融資条件の緩和、融資方法の効率化などの融資制度の見直しを行ってきています。

融資の具体的な手続きは次のとおりです。加盟国から融資の要請があると、IMFと加盟国は経済や財政の状況と資本のニーズについて協議します。そして、IMFと加盟国は、融資を必要とした問題を解決するため、一定の政策を実施することを合意します。

合意後、IMFの理事会で融資が承認されます。融資が行われた、IMFは、加盟国が融資の条件である政策を確実に実施しているかどうかを監視します。そして、加盟国が問題を解決して経済や財政を健全な状態に戻せば、IMFの資金は確実に返済されることになります。

(3) IMFは、加盟国が経済の安定と成長のために知識や政策の実施などを必要とするとき、そのための技術支援や研修を行います。すなわち、IMFは加盟国の要請に応じて財政や金融などの政策能力を備えた専門家を派遣しています。

そして、加盟国の関係職員の知識や政策能力を高めるため、技術支援や研修を行います。IMFによる専門的な技術支援や研修の提供には、IMFの中核的な業務として多くの予算が充てられています。

具体的には、IMFは、税収の改善、財政の強化、金融や為替政策の改善、法制度の整備、ガバナンスの強化などについて、各加盟国のニーズに合わせて政府や中央銀行の職員などの能力開発に取り組んでいます。

SDR(特別引出権)の創設

SDRはSpecial Drawing Rightsの略称です。金やドルが国際取引を決済する資産として不足したため、1969年、IMFはそれらを補完する新たな準備資産としてSDRを創設しました。

SDRとは、加盟国が、不足している外貨準備を補うため、IMFを通じて他の加盟国に外貨を請求して他の加盟国から外貨を受け取ることのできる権利です。そして、外貨を提供した加盟国は、外貨を請求した加盟国から代わりにSDRを受け取ります。

そのSDRは、将来、他の加盟国に外貨を請求するときに利用できます。そして、IMFは融資をSDR建てで行っています。また、SDRは、IMF協定に定められた特定の状況になると、クォータ(IMFに対する出資割当額)に比例して、IMFから加盟国(SDR参加国)に配分されます。

外貨準備とは、日本を例にすると、財務省や日本銀行が円安を是正するために為替介入を行うときに使用する資金のことだよ!

そのほか、外貨準備とは、ある国の通貨の価値が急激に下がったため、その国が通貨危機に陥り、他国に対する外貨建て債務の返済が困難になったときに使用する準備資産のことでもあるんだ!

1SDRは1米ドルで金1/35オンスでしたが、1973年に固定相場制が崩壊した後は、SDRの価値を通貨のバスケットに基づいて決めています。バスケットは、IMFからいつでも換金できる自由利用可能通貨(現在は、米ドル、ユーロ、円、英ポンド、人民元の5通貨)で構成されています。

バスケットを構成する通貨の間の為替相場に応じて、各通貨の比重は変動します。そして、SDRの価値は、市場の為替相場に基づき米ドル換算した合計値として、毎日決定されています。バスケットの通貨の構成は、原則5年ごとに各国の経済状況に応じて見直されます。






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