RCEP(アールセップ)
RCEPとは、地域的な包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership)のことです。参加国は、東南アジア諸国連合(ASEAN: インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを加えた15か国です。
RCEPは世界のGDPの約3割を占める経済圏になります。また、RCEPは、日本の貿易総額の約5割を占める東アジア地域の経済連携協定を意味します。貿易や投資を促進し、サプライチェーンの効率化に向けて市場アクセスを改善し、多様な国々の間で知的財産や電子商取引などの幅広い分野についてルールを整備するものです。
インドを加えた16か国で交渉が進められたけど、インドは、協定の署名には参加せず、RCEPには加盟しなかった。その理由は、安い製品が国内の市場に入るため、国内の産業が打撃を受けることを心配したからだ。
RCEPの経緯
2012年11月、カンボジアで開催されたASEAN関連首脳会議において、ASEAN諸国とFTAパートナー諸国(日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)により、RCEP交渉の立上げが宣言されました。そして、RCEP交渉の基本指針及び目的が示されました。
RCEP交渉を立上げる目的は、ASEAN加盟国とFTAパートナー諸国の間で、現代的な、包括的な、質の高い、かつ、互恵的な経済連携協定を達成することでした。また、RCEPには、物品の貿易、サービスの貿易、投資、経済及び技術協力、知的財産、競争、紛争解決、その他の事項を含めました。
RCEP交渉は次の原則を指針としました。① WTO協定(GATT第24条及びGATS第5条)との整合性を確保、② 既存のASEAN+1FTAよりも相当程度改善した、より広く、深い約束、③ 貿易と投資を円滑化する規定、貿易と投資関係の透明性を向上させる規定、国際的又は地域的サプライチェーンへの参加国の関与を促進する規定を含む、④ 参加国の異なる発展段階を考慮し、後発開発途上国に対する追加的な柔軟性を含む
⑤ 参加国の2国間又は多国間FTAは存続し、RCEP協定はこれらの2国間又は多国間FTAの条件に影響を及ぼさない、⑥ ASEANのFTAパートナー国及び域外の経済パートナー国が参加できる加盟条項を設ける、⑦ 技術協力及び能力開発に関する規定は、RCEPに参加する途上国及び後発開発途上国のために利用可能、⑧ 物品の貿易、サービスの貿易、投資及びその他の分野の交渉は並行して実施
2013年5月以降、多くの交渉と閣僚会合が実施されました。そして、4回の首脳会議の開催を経て、2020年11月の首脳会議においてRCEP協定の署名が行われました。
RCEP協定
RCEP協定には、個別品目の関税の撤廃や削減等、原産品として認められるための要件や証明手続等、税関手続の一貫性や透明性の確保や簡素化と通関の迅速化、衛生植物検疫措置に関する手続の透明性の確保、適合性評価手続に関する円滑化や透明性の確保、経過的RCEPセーフガード措置の規定や手続的要件等、サービスの貿易での内国民待遇・市場アクセス・最恵国待遇の義務、人の一時的な入国や滞在の許可や手続、そして、
投資家の権利保護・投資環境整備・内国民待遇・最恵国待遇の義務、知的財産権の保護、電子商取引の促進等、競争の促進と経済効率や消費者福祉の向上、中小企業の貿易や投資活動への参画支援、参加国間の経済格差縮小のための経済協力や技術協力、中央政府機関の調達に関する手続の透明性の確保や協力の促進、などが定められています。
これらの規定のうち、関税の撤廃や削減については、物品の貿易の関税撤廃率はRCEP参加国全体で91パーセント(品目数ベース)になります。例えば、日本からの輸入品に対する関税は、中国では86パーセント、韓国では83パーセントが撤廃されます。
税関手続については、参加国の関税法令の適用において予見可能性を高めるとともに、一貫性や透明性のある運用を促進する具体的な措置が規定されています。また、投資家の権利の保護や投資環境整備等については、投資家の予見可能性を高めるとともに、投資活動を促進するルールが規定されました。
知的財産権の保護については商標権の保護が強化されています。例えば、広く認識されている商標(周知商標)の条件として、自国や他国で商標登録されていることを要求されなくなりました。すなわち、日本の企業が日本以外の参加国において周知商標として保護を求める場合、その商標が参加国で登録されている必要はなくなりました。
電子商取引の促進等については、例えば、取引を促進するルールが規定されました。すなわち、公共政策の正当な目的の達成又は安全保障上の重大な利益の保護に必要な場合を除いて、政府は企業に対して、ビジネスのために行う情報の国境を越える移転を妨げてはならないことが定められました。これにより、参加国間におけるデータの自由な移転が約束されました。
このように、協定には、関税の撤廃をはじめ、各種手続の透明性の確保や権利の保護など、自由貿易を促進するための様々な事柄が規定されています。
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