海王星とは
海王星の英語名はネプチューン(Neptune)です。ネプチューンは、ローマ神話の海神で、ギリシア神話のポセイドンに相当します。ポセイドンは最高神ゼウスの兄ですが、序列はゼウスが上で、ゼウスによって海の神に任命されました。ポセイドンはトライデント(三叉矛)という武器を携えている姿が有名です。そして、ポセイドンは、海を支配するだけでなく、地震を起こしたり、豊穣をもたらしたりする力を持つ強大な神です。

海王星は太陽系の8番目の惑星です。すなわち、太陽系には8つの惑星(水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星)があります。そして、海王星は太陽から見て一番外側に位置しています。そこで、海王星は、ほぼ円に近い楕円軌道を描きながら、太陽の周りを公転しています。公転とは、ある天体が他の天体の周りを周期的に回転していることです。
また、ニュートンの万有引力の法則から計算された惑星の軌道は、観測から導き出された同じ惑星の軌道と一致することが判明しています。イギリスのジョン C. アダムス(1819~1892年)とフランスのウルバン・ルベリエ(1811~1877年)という2人の数学者は、1781年に発見された天王星には計算と観測から導き出された軌道に食い違いがあることを発見しました。

2人は、その食い違いが、天王星の先にはまだ発見されていない惑星があって、その重力によって引き起こされたものであるとそれぞれ考えました。そして、2人は、独自にその未知の惑星がある場所を計算して推測しました。1846年9月、ドイツの天文学者のJ. G. ガレ(1812~1910年)は、ベルリン天文台で2人が計算した軌道に従って観測したところ、新しい惑星を発見することができました。これが海王星でした。
海王星までの距離
海王星は、楕円軌道を描いて太陽の周りを公転しているため、太陽との距離は一定ではありません。そして、海王星は太陽系において太陽から最も遠い位置にあります。海王星と太陽との平均距離は約45億440万キロメートルになります。ちなみに、太陽から地球までの平均距離は約1億4,960万キロメートルです。
すなわち、海王星は、太陽からの距離で比較すると、地球のおよそ30倍も遥か遠方で公転しています。海王星が地球に最も接近するとき、この2つの惑星間の距離は約43億1,050万キロメートルです。一方、海王星が地球から最も遠く離れるとき、その距離は約46億8,610万キロメートルになります。

海王星が地球に最接近するとき(約43億1,050万キロメートル)、2つの惑星間を光の速さ(秒速約30万キロメートル)で移動すると、約4時間かかります。これは海王星の光が地球に到達するまでの時間ということになります。また、秒速11.2キロメートル(地球の重力から離脱できる第二宇宙速度)の宇宙船で、地球から最接近するときの天王星に行くには、単純計算で約4,454日(約12年2カ月半)かかります。

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また、NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査機ボイジャー2号は、1977年8月20日に米国フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、1989年8月25日に最後の目的地であった海王星に約4,800キロメートルまで最接近しました。ここまでの飛行時間は約12年になりました。

ボイジャー2号が送信してきた画像によって、人類は初めて海王星の間近の姿を見ることができました。2006年1月19日、惑星探査機ニュー・ホライズンズが地球を出発しました。ニュー・ホライズンズは、2007年2月28日には木星でスイングバイ航法を使って加速しました。そして、2014年8月25日、海王星の軌道を通過しました。その飛行時間は約8年7カ月でした。

スイングバイ航法とは、惑星などの重力や公転を利用して探査機などを加速したり、減速したりする方法だよ!詳しくことは、「宇宙に飛んでいく【ロケット】についてわかりやすく解説!」を読んでね!
海王星の自転と公転
地球は太陽の周りを1年で一回りします。つまり、地球の公転周期は1年です。これを基準にして海王星の公転周期を計ると、約165年になります。そして、海王星の公転速度は平均で秒速約5.44キロメートルです。ちなみに、地球の公転速度は平均で秒速約29.78キロメートルです。比較すると、海王星は、地球の遥か外側にある軌道を非常にゆっくりとした速度で公転していることが分かります。


太陽系の惑星の平均公転速度(秒速)は次のとおりだよ!水星(約47.36キロメートル)、金星(約35.02キロメートル)、地球(約29.78キロメートル)、火星(約24.08キロメートル)、木星(約13.06キロメートル)、土星(約9.65キロメートル)、天王星(約6.81キロメートル)、海王星(約5.44キロメートル)
各惑星の公転速度を比較すると、太陽から離れるほど惑星の公転速度が遅くなるのが分かるよね!その理由は、太陽の重力(引く力)と惑星が公転している遠心力(離れる力)とのバランスを保つためだよ!すなわち、太陽と各惑星はお互いに重力で引っ張り合っているんだ!当然、大きな太陽の重力は強いから、もし惑星が静止していたら、惑星は太陽に引き寄せられて飲み込まれてしまうんだ!
だから、惑星は太陽を中心にして回転することによって遠心力を働かしているんだ!そして、太陽に近い惑星ほど、太陽から強い重力を受けるので、速く回転して遠心力を強くしているんだよ!つまり、各惑星は、太陽に飲み込まれず、そして、太陽系から飛び出さないように、太陽の重力と遠心力との釣り合いを取って公転しているんだ!つまり、釣り合いが取れた惑星のみが太陽系の惑星になることができたんだよ!
また、地球の自転周期(天体が軸を中心にして1回転するのにかかる時間)は約24時間ですが、それに比べて、海王星の自転周期は平均で約16時間です。すなわち、地球の1日に相当するものは海王星では0.67日になります。
海王星の大きさ
海王星の赤道半径は約24,764キロメートルです。そして、地球の赤道半径は約6,378キロメートルです。つまり、海王星は地球の約3.9倍の大きさがあります。海王星は、隣に位置する天王星(赤道半径は約25,559キロメートル)より少し小さい惑星ですが、太陽系の惑星の中では、木星、土星、天王星に次ぐ4番目の大きさです。
一方、海王星の質量は地球の17倍で木星、土星に次ぐ3番目の大きさです。ちなみに、4番目に質量が大きい惑星は天王星で地球の約14.5倍です。また、海王星の体積は地球の約58倍です。この大きさは木星、土星、天王星に次ぐ4番目の大きさです。ちなみに、天王星の体積は地球の約63倍です。
海王星の表面
海王星は青色をしている氷の惑星ですが、その表面は固体ではありません。表面には水素、ヘリウム、メタンなどのガス層(大気)があります。これらの大気成分のうち水素が約85パーセントを占めています。海王星は、太陽系の一番外側を公転しているため、太陽の光は少ししか届きません。そのため、海王星の表面温度は摂氏マイナス約220度と言われています。

太陽の光には赤や青の光が混ざっていますが、メタンは赤色の光を吸収する働きがあります。そのため、太陽の光を反射している海王星は、青色の光だけを反射しています。この現象は大気にメタンを含む天王星でも起こりますが、天王星は白みがかった青色に見えます。それは白く見える靄(もや)の厚い層があるためです。
海王星の表面には、時速2,000キロメートル以上になる暴風が吹き荒れている大きな渦があります。それは大暗斑(だいあんはん)と呼ばれています。また、その表面にはスクーターと呼ばれる白い雲もあります。その雲は強風に流されて東西方向に高速で周回しています。
海王星の内部構造
海王星は3つの層から構成されていると考えられています。すなわち、中心には岩石(ケイ酸塩)、鉄、ニッケルで形成されている固体のコア(核)があります。そのコアを覆っているのが水、メタン、アンモニアなどによって形成されている氷のマントル層です。そして、水素を主成分としてヘリウム、メタンなどを含むガス層(大気)があります。

また、海王星では強い磁場が発生しています。その発生起源は次のとおりです。海王星の数千キロメートルの深さのところでは超高圧になっています。そのため、炭素を含んだ水は、極めて高い圧力によって圧縮されて、金属のように電気を通す状態になっています。この金属的な流体の中で電気が流れることによって、磁場が電磁石のような形で発生していると考えられています。
さらに、超高圧の状態の中では、メタン(炭化水素化合物)から分離した炭素が、圧縮されてダイヤモンドになります。そして、そのダイヤモンドが深層に沈んでいると考えられています。なお、海王星の平均密度は1立方センチメートルあたり1.64グラムです。
海王星の環と衛星

海王星には、内側からガレ環、ルヴェリエ環、ラッセル環、アラゴ環、アダムズ環と呼ばれる5つの環があります。また、海王星では16個の衛星が確認されています。その中で最大の衛星はトリトンです。トリトンという名称は、ギリシア神話の海神ポセイドン(ネプチューン)の息子の名前です。トリトンの赤道半径は約1,353キロメートルです。約5.9日の周期で海王星の周りを公転しています。

トリトンは海王星の自転とは逆向きに公転しています。この逆行軌道と海王星との潮汐(ちょうせき)力によってトリトンの軌道は徐々に低くなり、海王星に近づいています。そのため、トリトンは数億年後には海王星に落下するか、砕け散ることになると考えられています。潮汐力とは、天体の各部分に働く重力と天体の重心に働く重力との差のことです。
トリトンには窒素とメタンの薄い大気があります。その表面は超低温の氷の世界で摂氏マイナス約235度と言われています。トリトンの表面にはクレーターが少なく氷の火山があります。海王星との潮汐力が火山活動を起こしていると考えられています。クレーターとは隕石の衝突によって作られた丸いくぼ地のことです。また、その表面の一部には窒素ガスを噴き出す間欠泉があります。
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