鉱物資源の分類
地下に埋蔵されている有益な鉱物を鉱物資源と呼びます。鉱物資源には大きく別けて金属資源と非金属資源があります。非金属資源とは、金属としての性質を持たない石灰石やケイ砂などです。
そして、金属資源は、一般的に、埋蔵量や産出量が多い鉄、銅、アルミニウムなどのベースメタル、金、銀などの貴金属、埋蔵量や産出量が少ないニッケル、クロム、コバルトなどのレアメタルに大別されます。
レアメタルの現状
1980年代、鉱業審議会(経済産業省の外局である資源エネルギー庁の附属機関)において、地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、工業需要が現に存在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるものをレアメタルと定義しました。
すなわち、レアメタルとは、需要が増えているにもかかわらず、地下の埋蔵量が少なかったり、採掘や精錬のコストが高かったり、抽出が技術的に難しかったりして、流通量や使用量が限られている希少金属のことです。
2019の資源エネルギー庁の資料「新・国際資源戦略の策定に向けた論点」には、次のとおり、レアメタルの特徴が示されています。
① 資源の偏在性が高く、日本にとって地政学的なリスクが高い地域に偏っているケースが多い。 ② レアメタルの市場は、ベースメタルと比較して小さく、価格のボラティリティ(価格変動性)が高い。
③ 製品開発動向により需要が影響を受けやすい。 ④ 他の鉱石の副産物として生産されるレアメタルの供給は、主生産物の供給に左右されるため、副産物の需要動向に応じた供給を行うことが困難。
すなわち、日本は、レアメタルをほとんど輸入していますが、それぞれの鉱種は輸入先(産出国)が偏っています。特に中国、南アフリカなどにおいて産出されるレアメタルが多くあります。
また、レアメタルはベースメタルなどの副産物として産出される場合もあります。そのため、そのようなレアメタルの供給量は、ベースメタルなどの生産量によって影響されることになります。
このように、レアメタルは、その産出国が偏在していたり、供給が不安定になったりするため、価格の変動も大きくなりやすいです。そして、このレアメタルは、国家備蓄と民間備蓄をあわせて、国内基準消費量の60日分に相当する量を備蓄目標量にしています。
レアメタルの種類
1980年代、日本では31鉱種のレアメタルが指定されました。鉱種とは天然の均質な無機物である鉱物の種類のことです。31鉱種とは、30鉱種のレアメタル金属元素と1鉱種のレアアースのことです。
レアアースとは、17種類の元素(希土類)をまとめたものの総称です。これにより、31鉱種、47元素になります。30鉱種のレアメタル元素記号(名称)と1鉱種のレアアースは次のとおりです。
Li(リチウム)、Be(ベリリウム)、B(ホウ素)、希土類元素(レアアース)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Se(セレン)、Rb(ルビジウム)、Sr(ストロンチウム)、
Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)、In(インジウム)、Sb(アンチモン)、Te(テルル)、Cs(セシウム)、Ba(バリウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Pt(白金) 、Tl(タリウム)、Bi(ビスマス)
2021年の資源エネルギー庁の資料「2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた鉱物資源政策」には、レアメタルとして34鉱種(55元素)が次のとおり示されています。
Li(リチウム)、Be(ベリリウム)、B(ホウ素)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Se(セレン)、Rb(ルビジウム)、Sr(ストロンチウム)、Zr(ジルコニウム)、
Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、In(インジウム)、Sb(アンチモン)、Te(テルル)、Cs(セシウム)、Ba(バリウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Tl(タリウム)、Bi(ビスマス)、希土類元素(レアアース)、PGM(白金族)、C(グラファイト)、F(フッ素)、Mg(マグネシウム)、Si(シリコン/ケイ素)
以前の31鉱種との違いは、Pd(パラジウム)とPt(白金)の2鉱種がPGM(白金族)として1鉱種にまとめられ、C(グラファイト)、F(フッ素)、Mg(マグネシウム)、Si(シリコン/ケイ素)の4鉱種が追加されました。つまり、31-(2-1)+4=34鉱種です。
そして、PGM(白金族)には、Pt(プラチナ/白金)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Os(オスミウム)の6種類の鉱物があります。そのため、34-2+17+6=55元素になります。
レアメタルの用途
レアメタルは、強度を増したり、錆びにくくしたりするなどの目的で、構造材料に添加してその特性を向上させるために使用されています。たとえば、乗物の支柱として、ベースメタルの鉄にレアメタルのクロムを10.5パーセント以上添加したステンレス鋼を使うことで、支柱が錆びにくくなります。
レアメタルが使われているリチウムイオンバッテリー(電池)は、パソコン、スマートフォン、モバイルバッテリー、コードレスタイプの掃除機、 携帯ゲーム機、ビデオカメラ、デジタルカメラなどの様々な製品に使用されています。
省エネ照明器具のLED(発光ダイオード)は、電気を流すと発光する半導体からできています。そして、その半導体にはガリウムなどのレアメタルが使用されています。また、液晶ディスプレイには、透明電極材料としてレアメタルのインジウムが使用されています。
レアメタルは、電子材料として、パソコン、スマートフォン、液晶テレビなどの家電製品を構成する半導体、 液晶基板、電子部品にも使用されています。そして、レアメタルは、磁性材料として、モーター、変圧器、センサー、磁気記録装置などにも使用されています。
また、レアメタルは、ニューガラス製品として、タッチパネル、液晶パネル、太陽電池、光ファイバなどにも使用されています。
レアアースの現状
レアアースの生産量は、中国が圧倒的に多く、米国、オーストラリアなどが続いています。このように、レアアースは米国やオーストラリアなどにも多く埋蔵されていますが、生産するに際して問題もあります。
すなわち、レアアース鉱石は、放射性物質を含んでいることが多いので、採掘や製錬において大量の放射性廃棄物が発生します。そのため、環境破壊に対する規制が厳しくなったり、処理に費用がかかったりする問題があります。
一方、中国では、このような規制が緩く、労働力も安いため、レアアースの生産量を増やすことができました。そして、日本は中国から多くのレアアースを輸入していました。
しかし、2010年、海上保安庁の巡視艇が、尖閣諸島沖の日本の領海で操業していた中国漁船を発見して、退去を求めましたが、中国漁船は巡視艇に衝突してきました。そのため、海上保安庁はその漁船の船長を逮捕しました。
これに反発した中国は、日本に対してレアアースの輸入を事実上禁止しました。これを発端にして、日本は、レアアースの輸入を中国に依存していることに対する危機意識が高まりました。そして、日本は、中国依存から脱却するため、輸入先をベトナムなどに分散する対策をとりました。
さらに、日本は、レアアースの使用を減らすため、代替的な技術の開発を加速させています。日本は、レアアースなどの重要鉱物を安定的に確保するため、米国などの国々と連携して、供給元の多角化などを進めるなど、安定的なサプライチェーンを構築することを目指しています。
日本の南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内で、
水深約6,000メートルの海底にレアアース泥が
大量にあることが発見されたんだ!
6,000メートルの海底から採掘するのは、大変な作業で
コストもかかるから、現在、日本は、このレアアースの
採掘、採算性、実用化などに向けて、
様々な調査や作業を行っているところだよ!
レアアースの種類
レアアースは、34鉱種あるレアメタルの1種で、17種類の元素(希土類)をまとめた総称です。17種類の元素と名称は次のとおりです。
Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)
レアアースの用途
レアアースは、現代の日常生活を支える色々なハイテク製品などに使われています。すなわち、ハイブリッド車、電気自動車、液晶テレビ、スマートフォン、パソコン、デジタルカメラ、その他の家電製品などに使われています。
たとえば、ハイブリッド車、電気自動車、家電製品などのモーターには、レアアースマグネット(永久磁石)使われています。それにはネオジムやジスプロシウムが含まれています。
そして、液晶ディスプレイや照明器具の蛍光体には、イットリウム、セリウム、ユウロピウム、テルビウムなどが含まれています。
そのほか、電子機器の基盤を構成する部品として使われているガラス基板の研磨剤、自動車の排気ガスに含まれている有害な化学物質をきれいする触媒(フィルター)にはランタン、セリウムが含まれています。このように、レアアースは、現代社会や私たちの生活に欠かすことができない重要な材料になっています。
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