海の区分
海は、領海、接続水域、国際海峡、排他的経済水域(EEZ)、公海の5つに区分できます。領海とは、沿岸国の海として、基線(海面が最も低いときに陸地と海面との境界線)から12海里(約22キロメートル)までの海域です。
接続水域とは,、基線から24海里(約44キロメートル)までの海域です。国際海峡とは、国際航行に使用されている海峡で、船舶などが自由に通過できます。
日本では、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡の東水道・西水道、大隅海峡の5か所が国際海峡に該当しています。そこでは、領海を3海里(約5.6キロメートル)に設定しています。公海とは、どこの国からの制約も受けない、自由な海のことです。次に、排他的経済水域について解説します。
排他的経済水域(EEZ)
EEZとはExclusive Economic Zoneの略語です。そして、EEZ(排他的経済水域)は、基線から200海里(約370キロメートル)までの海域で、国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)に規定されています。
この排他的経済水域を設定した国、つまり、沿岸国は、排他的経済水域において、主権的権利と管轄権を行使することができます。そして、その行使のため、国内法を適用することができます。
すなわち、沿岸国は、この水域(海底及び地下を含む)において、魚などの水産資源や鉱物、石油、天然ガスなどの天然資源を探査、開発、保存や管理などを独占的に行うことができます。また、沿岸国は、漁獲可能量を決定することもできます。
さらに、沿岸国は、これらの行為を実行するうえで、乗船、検査、拿捕などを行うことによって、違法な行為を取り締まることができます。そして、これらの活動を行うことは、主権的権利として沿岸国に認められています。
また、沿岸国には、この水域において、人工島、施設や構築物を設置・利用したり、海洋環境を保護・保全したり、海洋の科学的調査を行ったりする管轄権があります。
これに対し、他国は、この水域内において、船舶などを自由に運行させたり、海底ケーブルやパイプラインを敷設したりすることはできます。しかし、沿岸国の同意を得ることなく、海底などを調査したり、魚や鉱物などを取ったり、人工島を設置・利用したりするなど、沿岸国の主権的権利や管轄権を侵害することはできません。
排他的経済水域を設定した経緯
1945年、米国のトルーマン大統領は、米国の大陸棚における海底と地下の資源が米国の管轄に属すること、また、米国の沿岸の公海上に保存水域を設定して、漁業資源の保存を米国主導で行うことを宣言しました。
1947年、トルーマン宣言に刺激されて、チリとペルーの大統領が、沿岸から200海里の海域の主権を宣言しました。
1952年、チリ、ペルー、エクアドルの3国は、チリのサンティアゴで、沿岸から200海里の水域を設定して、海上、海中、海底(地下を含む)について国家の主権を主張した宣言(サンティアゴ宣言)を採択しました。
1958年、海洋に関する各国の主張を抑え、国際ルールを定めるため、第1次国際連合海洋法会議が開催されました。そこでは、ジュネーブ海洋法4条約(領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約、大陸棚に関する条約)が採択されました。
しかし、領海などの範囲については合意に至りませんでした。その背景には、船舶が自由に航行できる海域をなるべく広くしたい先進国や自由に漁ができる海域を減らしたくない遠洋漁業国が、領海などを広くすることに反対していた一方で、自国の沿岸海域における水産資源などを独占的に利用したい途上国や新興国は、広い領海などを求めていた、という事情がありました。
1960年、第2次国際連合海洋法会議が開催されました。そこでは、アメリカとカナダが主導した妥協案(6海里(約11キロメートル)の領海とその先の6海里の漁業水域を設定すること)が多くの賛同を得ました。しかし、日本などの遠洋漁業国が反対したため、その案は採択されませんでした。
その一方で、1960年代以降、アフリカや中南米の国々が、沿岸から200海里までの領海などを主張するようになりました。
1973年、第3次国際連合海洋法会議が開催されました。この会議は、10年という長期の議論が重ねられ、1982年に国連海洋法条約が採択されました。そして、1994年にこの条約は発効しました。
これまでの対立に終止符が打たれた背景には、時の経過とともに、海洋の水産資源や天然資源を採取したり、利用したりするための技術が急速に発達したため、海域の利用や範囲などについて、国際的なルールを早急に定める必要性が高まったことがあります。
この国連海洋法条約によって、領海は、基線から12海里(約22キロメートル)を超えない範囲で定めること、そして、排他的経済水域は、基線から200海里(約370キロメートル)を超えない範囲内で設定することなどが定められました。
日本の排他的経済水域
海に囲まれた日本の排他的経済水域の広さは、領海と接続水域を含めて、約447万平方キロメートルあります。これは日本の国土面積(約38万平方キロメートル)の約12倍になります。
特に、太平洋に連なる伊豆諸島や小笠原諸島の周囲には、排他的経済水域が広がっています。ここには、日本全体の約40パーセントに当たる排他的経済水域があります。この広大な水域では、日本の主権的権利や管轄権が行使されています。
すなわち、小さな島が、一つでも海洋上に領土として存在していれば、その周囲には広大な排他的経済水域を設定することができます。そのため、その島を領有する国は、その水域において、水産資源や天然資源を独占的に利用することができます。これが、中国や韓国が尖閣諸島や竹島の領有権を主張する一つの原因にもなっていると言われています。
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