ロケットの飛ぶ原理
ロケットが飛ぶ原理は反動です。反動とは、他に力を加えたときに、その反作用で押し返される力のことです。たとえば、オフィスでキャスターのついた椅子に座って、手前の机を手で押すと、椅子は後ろに動きます。これが反動です。
もう一つのわかりやすい例はゴム風船です。ゴム風船に空気を吹き込み、大きくふくらまします。それから、上に向け、ふさいでいる吹き込み口から指を離すと、ゴム風船は空気を吹き出しながら上に勢いよく飛んでいきます。
このとき、風船を上に飛ばしているのは、空気を吹き出す下の方向とは反対に働く反動の力です。これを推力と呼びます。これがロケットの飛ぶ原理です。すなわち、ロケットは、エンジンの中で燃料を燃やしてガスをつくり出し、それを噴射します。そして、ロケットはその推力で飛んでいきます。
ロケットエンジンの仕組み
重力に逆らって、ロケットを宇宙に飛ばすためには非常に大きな推力が必要になります。ロケットの推力は、1秒間に噴射されるガスの量と速度によって決まります。すなわち、エンジンの中で燃料を燃やして高圧ガスを大量につくり出します。そして、それを高速で噴射することによって、大きな推力が生まれます。
そのため、ロケットの打ち上げにはロケットエンジンが重要な役割を果たします。ロケットエンジンには、燃料を燃焼させて高温・高圧のガスをつくり出す燃焼室とそのガスを噴射するノズルがあります。
燃焼室ではガスが3,000度を超えることもあります。そのままでは、金属製の燃焼室の壁面は溶けてしまいます。そのため、燃焼室には冷却機能も備えられています。そして、燃焼室でつくられた高温・高圧のガスはノズルで高速噴射されます。
ノズル全体は、ラッパの先端のような形をしています。すなわち、燃焼室から押し出されたガスがノズルに流れる部分は細い管になっています。これにより、ガスの流れる速度を速めることができます。
さらに、ガスが細い管から出て外に噴き出すノズルの部分では、裾の広がったスカートのような形をしています。このように、ノズルは、ガスの噴出口に向かって広がることによって、ガスの速度をさらに速め、超音速のガスを噴出します。
そして、ロケットには、酸素のない宇宙で高温・高圧のガスをつくり出すため、推進剤(燃料と酸化剤)が積まれています。この推進剤の搭載方法によって液体(燃料)ロケットと固体(燃料)ロケットに分けることができます。
ロケットは、液体燃料又は固体燃料のどちらかで飛ぶことはあるけど、液体燃料エンジンと固体燃料エンジンの両方を搭載したロケットもあるよ!
たとえば、大型の液体ロケットを打ち上げるときに、小型の固体ロケットを機体の外部に複数本装着して、必要な推力を確保したりするんだ!
液体ロケット
液体ロケットでは、燃料として液体水素やケロシン、酸化剤として液体酸素が主に使用されています。そして、これらの推進剤は、別々のタンクに収納されています。そこから燃焼室に送られることによって燃焼ガスをつくり出します。
液体ロケットは、燃焼室に推進剤を送る量などを調節できます。そのため、推力を変えたり、噴射を止めたり、噴射を再開したりすることができます。すなわち、液体ロケットは誘導制御を行う性能が優れています。
また、液体ロケットは比推力の数値も高いです。比推力とはロケットエンジンの燃費を表す指標です。その一方で、液体ロケットでは、推進剤を別々のタンクから燃焼室に送るなど、その構造が複雑にできているため、開発や製造は容易ではありません。
固体ロケット
固体ロケットでは、燃料としてブタジエン系の合成ゴムなど、酸化剤として過塩素酸アンモニウムなどが使用されています。そして、このような燃料や酸化剤に結合剤などを混ぜ合わせて固めたものが推進剤になります。
この推進剤は燃焼室に直接収納されます。そこで推進剤を燃焼させてガスをつくり出します。このような構造の固体ロケットは、液体ロケットより大きな推力を出すことができます。
しかし、噴射を途中で止めたり、再開したりすることはできません。すなわち、固体ロケットは、誘導制御を行う性能や比推力は液体ロケットより劣っています。そして、固体ロケットは、その構造が簡単にできているため、開発や製造は液体ロケットよりも容易です。
ロケットの速度
ロケットを宇宙に飛ばす場合には、重力との関係から3つの段階に分けた速度が必要となります。それを第一宇宙速度、第二宇宙速度、第三宇宙速度と呼びます。
第一宇宙速度は、秒速7.9キロメートル、時速では約28,400キロメートル、マッハ約23です。マッハ(M)とは音速のことです。マッハ1は音速と等しい速さで、秒速約340メートル、時速約1,224キロメートルです。
この第一宇宙速度は、銃から発射された弾丸よりも速く、約90分で地球を一周する速さです。すなわち、打ち上げたロケットが、地上に落下しないように地球の周回軌道に乗るためには、第一宇宙速度に達する必要があります。
たとえば、地球を周回する人工衛星を搭載したロケットは、この速度に達してから人工衛星を切り離します。これにより、人工衛星は地上に落下することなく、地球の周りを飛行し続けることができます。
第二宇宙速度は、秒速11.2キロメートル、時速では約40,300キロメートル、マッハ約33です。この速度は、ロケットが地球の重力を振り切って、遥か宇宙へと飛び出すために必要な速さです。
ロケットが、この速度に到達しない場合には、地球の周回軌道を飛び続けることになります。たとえば、月や火星を探査するために、探査機などを載せたロケットが打ち上げられた場合には、そのロケットは第二宇宙速度に達する必要があります。
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、アポロ計画(1969年~1972年)において、9機の宇宙船を月に送り、合計6回の月面着陸を成功させました。その結果、合計12人の宇宙飛行士が月面探査を行いました。その際、それらの宇宙船を打ち上げたサターンV型ロケットは第二宇宙速度に到達しています。
第三宇宙速度は、秒速16.7キロメートル、時速では約60,100キロメートル、マッハ約49です。この速度は、ロケットが、太陽の重力を振り切って、太陽系外へ飛び立つために必要な速さです。
これまでに、第三宇宙速度で打ち上げたロケットはありません。一方、NASAが打ち上げた宇宙探査機、たとえば、ボイジャー1号と2号、ニュー・ホライズンズなどの探査機は、宇宙飛行を行いながら、この速度に達しています。
すなわち、これらの探査機は、スイングバイという方法を使って加速しながら、第三宇宙速度に達しました。スイングバイとは、惑星の引力と公転を利用して加速又は減速することです。
スイングバイによる加速とは次のような理屈だよ。探査機は、惑星に近づくとき、惑星の引力によって引き寄せられるんだ!その際、探査機は、加速しながら、惑星に近づき、惑星の後ろを通過して、惑星が公転している方向に離れていくんだ!
この方法によって、探査機は、惑星から離れていくとき、その惑星の引力によって、加速分を減速されることなく、その惑星の引力から離脱できるのさ!
ちなみに惑星の公転平均速度(秒速)は、水星約47.4km、金星約35.0km、地球約29.8km、火星約24.1km、木星約13.1km、土星約9.7km、天王星約6.8km、海王星約5.4kmだよ!
このスイングバイを繰り返すことによって、探査機は、燃料などの推進剤を使うことなく、その速度を加速していくことができるんだよ!
このように、ロケットを打ち上げて宇宙に飛ばすためには、膨大なエネルギーと並外れた高速が必要になります。そこで、ロケットをできる限り効率的に打ち上げる方法が採用されます。
それは、地球の自転速度をロケットの速度に加える方法です。すなわち、ロケットの発射場所をなるべく赤道近くに設置して、ロケットを東向きに発射することによって、ロケットの速度を稼ぐとともに燃料などの推進剤の消費を減らすことができます。
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