
パートⅠでは炭水化物とたんぱく質について解説するね!パートⅡでは脂質について解説するよ!パートⅢではミネラルについてだよ!そして、パートⅣでビタミン(脂溶性ビタミン)、パートⅤでビタミン(水溶性ビタミン)について解説して五大栄養素だよ!
脂質
脂質は、エネルギー産生栄養素として脂質1グラムで約9カロリーのエネルギーをつくり出します。すなわち、脂質は、糖質とたんぱく質(1グラムで約4カロリーのエネルギーを産生)に比べ2倍以上のエネルギーをつくり出す効率の良いエネルギー源です。また、脂質は細胞膜などの構成成分としても重要な栄養素です。

脂質の主な成分は脂肪酸です。脂肪酸は炭素、水素、酸素の3つの元素によって構成されています。そして、脂肪酸には3つの分類方法があります。すなわち、炭素の鎖の長さ(炭素数)による分類、炭素と炭素の間の二重結合の数による分類、二重結合の位置による分類です。そして、各分類の中で脂肪酸の特徴や効能が明らかになります。
炭素の鎖の長さ(炭素数)による分類
炭素の鎖の長さ(炭素数)による分類には、短鎖脂肪酸(炭素数が6以下)、中鎖脂肪酸(炭素数が8~10)、長鎖脂肪酸(炭素数が12以上)という3つがあります。
短鎖脂肪酸は、大腸でビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が、水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサにしてつくり出す代謝物質です。代謝とは、体内で酵素や補酵素の働きによって物質を合成するときに起こる化学反応のことです。短鎖脂肪酸を増やすには、ヨーグルトや納豆などの発酵食品と善玉菌のエサとなるオートミールや納豆などの水溶性食物繊維やゴボウやタマネギなどのオリゴ糖を多く含む食べ物を摂取することが重要です。
このように、短鎖脂肪酸は、食べ物から体内に摂取されるのではなく体内で合成されます。短鎖脂肪酸は、大腸で吸収されると、上皮細胞の増殖や粘液の分泌などのエネルギー源となります。また、短鎖脂肪酸は、筋肉、肝臓、腎臓などでエネルギー源や脂肪を合成するための材料となります。そして、短鎖脂肪酸には、腸内環境を整えたり、コレステロールの合成を抑えたりする働きがあります。

中鎖脂肪酸は牛乳やパーム油などに多く含まれています。中鎖脂肪酸には主にエネルギーを生成する働きがあります。体内でエネルギーをつくり出す際には糖質(ブドウ糖)が利用されます。ブドウ糖が不足すると、脂肪を燃やしてエネルギーをつくり出します。
中鎖脂肪酸は、体内に吸収されてからエネルギーとして素早く分解されるため、余分なエネルギーをため込まない性質があります。そのため、脂肪が体につきにくくする効果があります。また、中鎖脂肪酸は、消化吸収が早いので、ケトン体の生成を促進します。ケトン体とは脂肪酸からつくり出されるエネルギー源のことです。
すなわち、糖の摂取を控えて中鎖脂肪酸を摂取することによって、体脂肪を燃えやすくする効果が期待できます。さらに、脳は、ブドウ糖をエネルギー源として利用していますが、アルツハイマー型認知症になると、ブドウ糖を利用することができなくなります。そのため、脳は、エネルギー不足になって機能不全に陥ります。
しかし、ケトン体は、ブドウ糖の代わりに、このような認知症を患った脳のエネルギー源としての役割を果たすことができます。すなわち、ケトン体は認知症の予防や改善にも効果が期待できます。そのほか、中鎖脂肪酸には、糖尿病を予防する働きがあるホルモンを増やしたり、血中の乳酸濃度を低くして運動能力を高めたりする効果も期待されています。

長鎖脂肪酸は、日常的に摂取しているバター、牛脂、植物油などに多く含まれています。長鎖脂肪酸には、オレイン酸、α-リノレン酸、リノール酸という体に良い働きをするものもあります。それらの栄養素には、一般的に、悪玉(LDL)コレステロールを減少させたり、血圧を低下させたりする効果が期待できます。そして、α-リノレン酸、リノール酸は必須脂肪酸です。
すなわち、α-リノレン酸とリノール酸は、人が健康を保つうえで必要なものですが、体内で合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります。一方、長鎖脂肪酸には体の健康にとって悪い働きをするものもあります。牛脂に多く含まれているミリスチン酸やパルミチン酸は、LDLコレストロールを上昇させるため、動脈硬化などを引き起こす可能性があります。
二重結合の数による分類
二重結合の数による分類には、二重結合がない飽和脂肪酸と二重結合がある不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸は肉、牛乳、乳製品などの動物性油脂に多く含まれています。一方、不飽和脂肪酸はオリーブ油、ゴマ油、菜種油などの植物性油脂や魚に多く含まれています。
飽和脂肪酸にはエネルギー源としての働きがあります。すなわち、余ったエネルギーは体内で皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。エネルギーの供給が十分ではないときには、それらの脂肪はエネルギーに変換されます。さらに、飽和脂肪酸は細胞膜などの構成成分としても重要な役割を果たしています。

一方、飽和脂肪酸を摂り過ぎると、体内で中性脂肪やコレステロールが余分に合成されるため、血中の脂質を増やしてしまいます。その結果、動脈硬化や心筋梗塞の原因にもなります。二重結合がある不飽和脂肪酸には、二重結合が1つの一価不飽和脂肪酸(n-9系(オメガ9))と二重結合が2つ以上の多価不飽和脂肪酸があります。

オメガ9にはオレイン酸などがあります。オレイン酸は、オリーブ油の主成分で、LDLコレステロールを増やさず、善玉(HDL)コレステロールを減らさないという効果があります。多価不飽和脂肪酸にはα-リノレン酸、リノール酸、DHA、EPAがあります。
二重結合の位置による分類
多価不飽和脂肪酸には、二重結合の位置によって、n-3系(オメガ3)脂肪酸とn-6系(オメガ6)脂肪酸があります。オメガ3には、α-リノレン酸、血液をサラサラにするEPA(エイコサペンタエン酸)、脳の発達に必要なDHA(ドコサヘキサエン酸)があります。α-リノレン酸はアマニ油やエゴマ油などに多く含まれています。

α-リノレン酸は、動脈硬化を予防したり、コレステロールや中性脂肪を減らしたりする効果が期待できます。EPAとDHAは青魚などに多く含まれています。EPAは血栓症を予防したり、中性脂肪を減らしたりする効果が期待できます。DHAは脳神経の機能を向上させる効果が期待できます。EPAとDHAは、体内でほとんど合成することができないため、必須脂肪酸の一種として扱われています。
オメガ6にはリノール酸があります。リノール酸は、総コレステロール値やLDLコレステロール値を低下させるため、冠動脈疾患による心臓病などを予防することが期待されています。オメガ6は植物油に多く含まれています。ちなみに、カップ麺やスナック菓子などにも植物油は使われています。
ただし、植物油には、オメガ6だけが含まれているわけではなく、様々な脂肪酸が含まれています。それぞれの成分の相乗効果によって健康に良い影響をもたらすこともありますが、過剰摂取は、かえって健康を害することになるので、注意する必要があります。
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