明けの明星と宵の明星
金星は英語でVenus(ヴィーナス)と言います。その名はローマ神話における愛と美の女神を意味しています。そして、金星は、星の中でも一段と明るく輝いているので、肉眼でも見ることができます。
金星は太陽に対して地球より内側を公転している惑星です。そのため、夜中の空に金星を見ることはできません。空が暗くなるのは、地球が自転しながら、太陽に対して外側を向くからです。
すなわち、外側を向いているところから、内側の惑星である金星を見ることはできません。金星は太陽が昇る前の東の空で見ることができます。これを「明けの明星」と呼びます。そして、太陽が沈んだ後の西の空に見えるとき、これを「宵の明星」と呼びます。
また、地球から見て、金星が太陽の前で同じ方向で重なるときを内合と言います。そして、金星が太陽の後ろで同じ方向で重なるときを外合と言います。内合のときは、金星は太陽の前で重なるため、金星を見ることはできません。
外合のときは、金星は太陽の後ろで重なるため、太陽が視界を遮り、金星は見えなくなります。一方、地球から見て、金星が太陽から一番離れて見える最大離角のときは、金星が見える最適な時期になります。
金星が太陽から西側に一番離れて見えるときを西方最大離角と言います。このとき、金星は「明けの明星」として太陽が昇る前の東の空に見えます。金星が太陽から東側に一番離れて見えるときを東方最大離角と言います。このとき、金星は「宵の明星」として太陽が沈んだ後の西の空に見えます。
1543年、ニコラウス・コペルニクスが、すべての惑星は太陽の周りを回っているという地動説を唱えたことはよく知られているよね!1610年には、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で天体観測を行いながら、 金星の満ち欠けを発見したんだよ!その発見によって地動説が正しいことが証明されたんだ!
金星までの距離
金星は地球に最も近い惑星です。地球の公転速度は秒速約30キロメートル、地球が太陽の周りを公転する周期は約365日です。一方、金星の公転速度は秒速約35キロメートル、金星が太陽の周りを公転する周期は約225日です。
すなわち、8年で地球が8回公転する間に、金星は13回公転します。その結果、8年で5回、内合(地球、金星、太陽の順で同じ方向に並ぶこと)になり、地球と金星との距離が最も近くなります。その距離は約4,000万~4,200万キロメートルになると言われています。
その反対に、外合(地球、太陽、金星の順で同じ方向に並ぶこと)になるときには、地球と金星との距離は最も遠くなります。 その距離は約2億5,800万~2億6,000万キロメートルになると言われています。また、地球と金星との平均距離は約1億7,000万キロメートルです。
ちなみに、秒速11.2キロメートル(地球の重力から離脱できる第二宇宙速度)の宇宙船で、地球に最接近するときの金星(約4,000万キロメートル)に到達するまでの期間は、単純計算で約41日になります。しかし、これまで打ち上げられた宇宙探査機は金星に到達するまで3~5か月を要しました。
また、金星から太陽までの距離は、太陽に最も近いときには約1億740万で、太陽に最も遠いときには1億890万キロメートルになると言われています。そして、金星と太陽の平均距離は約1億820万キロメートルになります。
金星の公転と自転
金星の公転については、先に解説したように、秒速約35キロメートルの速度で公転し、その周期は約225日です。すなわち、地球が8回公転する間に金星は13回公転します。
太陽系の惑星の自転方向は、金星を除いて公転方向と同じです。すなわち、金星は他の惑星とは逆の方向に自転しています。そのため、金星では地球とは逆の方向から1日が始まります。つまり、金星では太陽が西から昇り、東に沈むことになります。
その理由として、巨大な小惑星の衝突や太陽の重力による影響などの説がありますが、明確な理由はわかっていません。また、地球の自転速度は赤道で秒速約460メートルですが、金星の自転速度は赤道で約1.6メートルです。
この比較から明らかなように、金星の自転速度は非常にゆっくりしています。すなわち、地球が1回自転するには1日、約24時間かかりますが、金星が1回自転するには約243日、約5,832時間かかります。
しかし、金星は、逆向きに自転していることが影響して1日の長さは自転周期より短くなります。つまり、金星の1日は117日です。この長い期間において、金星では日が西から昇り、東に沈み、夜を経て、再び日の出を迎えます。
そして、先に解説したように、金星の公転周期は225日ですから、地球での日数で比較すると、225日-243日(自転周期)=-18日になり、金星は、1回自転するのに1年以上かかることになります。このように、金星は地球の常識を覆す不思議な惑星です。
金星の大きさ
金星の赤道半径は約6,052キロメートルです。そして、地球の赤道半径は約6,378キロメートルです。 すなわち、金星の赤道半径は地球の95パーセントで、両惑星はほぼ同程度の大きさになります。また、金星の重さは地球の0.82倍です。
金星の表面
金星は地球型惑星で岩石惑星です。地球型惑星とは、鉱物を主体とする岩石と鉄を主成分とする金属から構成されている惑星のことです。太陽系では水星、金星、地球、火星の4つの惑星がこれに該当します。金星では火山によって形成された地形が多くあります。そして、火山活動もあると言われています。
金星は厚い大気に覆われています。その大気は二酸化炭素が95パーセント以上を占めています。ちなみに、地球の大気には約0.04パーセントの二酸化炭素しか含まれていませんが、その温室効果による地球温暖化が問題になっています。
金星では、ほとんどが二酸化炭素で構成されている大気がもたらす温室効果によって、金星の表面温度は昼夜を問わず摂氏460度ぐらいになります。そのため、金星は太陽に最も近い水星よりも高温の大気に覆われた惑星です。ちなみに、水星の最高気温は摂氏430度ぐらいですが、夜間には摂氏マイナス170度くらいまで下がります。
そして、金星の表面での大気の圧力は90気圧にも達します。地球では、海抜0メートルでの標準的な気圧の値が1気圧ですから、地球の90倍の気圧ということになります。また、金星の上空は硫酸の粒でつくられた厚い雲に覆われています。そのため、太陽の光は地表に直接届きません。
そして、雲からは硫酸の雨が降ります。しかし、大気が高温のため、その雨は地表に達することなく蒸発してしまいます。金星では、スーパーローテーションと呼ばれる非常に強い風が吹いています。
スーパーローテーションとは自転の速さを超える速度で大気が周回している現象のことです。 金星ではこの強風がほぼ全球的に吹いています。大気の上層では、強風は自転の60倍を超え秒速100メートルに達しています。このように金星は想像を絶する極めて過酷な環境です。
金星の内部構造
金星の内部構造は明らかになっていません。しかし、金星は、地球型惑星(岩石惑星)で大きさも重さも地球とほぼ等しいことから、双子の惑星とも言われています。そのため、金星の内部構造も地球とよく似ているものと推定されています。
すなわち、金星の内部は、表面から中心に向かって地殻、マントル、核という3つの層から構成されているものと考えられています。そして、金星の地殻とマントルはケイ酸塩が主成分で、その中心核は鉄とニッケルによって形成されていると考えられています。
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