相対性理論
相対性理論は時間と空間に関する理論です。すなわち、時間と空間は、絶対的なものではなく、状況によって変化する相対的なものであるという考え方です。この理論は、ドイツ生まれの物理学者アルバート・アインシュタイン(1879~1955年)によって発表されました。
相対性理論には、1905年に発表された特殊相対性理論と1916年に発表された一般相対性理論の2つがあります。2つの理論には、重力の影響がない状態とある状態を前提にして考えるところに違いがあります。
すなわち、特殊相対性理論とは、特殊な条件下という意味で、重力の影響がない状態を前提にしている考え方のことです。一方、一般相対性理論とは、地球上の現実世界のように、重力の影響がある状態を前提にしている考え方のことです。
特殊相対性理論と相対性原理
特殊相対性理論は、「相対性原理」と「光速度不変の原理」によって構築されています。相対性原理とは、どのような慣性系を基準にしても、物理法則は同じ形式で表されるということです。
慣性系とは、物体は、力を加えない限り静止を続け、動いている物体は、力を加えない限り同じ速さで直線運動を続けるという慣性の法則が成り立つ座標系のことです。座標系とは、物体を観測している視点を表すものです。
例えば、地面に立っている人が、ボールを真下に落とすと、足元に落ちます。一定の速度で移動している電車の中で立っている人が、同様にボールを落とすと、足元に落ちます。どちらの場合も同じ物理の現象が起こっています。これが相対性原理です。特殊相対性理論では、この相対性原理を基にして光の速度を考察しています。
特殊相対性理論と光速度不変の原理
光速度不変の原理とは、光の速度はどこから観測しても変わらないということです。すなわち、人が、立ち止まっていても、光速に近い速度で移動していても、光の速度を観測すると、真空では秒速約30万kmになります。
仮に人が秒速約25万kmの宇宙船に乗って、光を追跡した場合、光は秒速約30万kmですから、30万-25万=5万、つまり、宇宙船に乗っている人は、秒速約5万kmの光を観測することになります。
しかし、光速度不変の原理によると、宇宙船内の人も、秒速約30万kmの光を観測することになります。このような現象が起こるのは、宇宙船に乗っている人の時間の流れが遅くなるからです。
乗船者の時間の流れが遅くなるとはどういうことでしょうか?これを小学校で習った公式を使って、わかりやすく説明します。その公式とは、道のり(距離)=速さ×時間です。そして、時間=道のり(距離)÷速さです。
はじめに、静止している人が光の速度を観測する場合には、静止している人と光との距離は、1秒で約30万kmになり、そして、速さは秒速約30万kmです。つまり、30万(距離)÷30万(速さ)=1(時間)になり、時間は1秒です。
次に、秒速約25万kmの宇宙船に乗って、光を追跡している人が観測する場合には、秒速約30万kmの光を秒速約25万kmの宇宙船で追跡しているので、宇宙船と光との距離は、1秒間で、30万-25万=5万になり、約5万kmです。そして、光の速さは不変ですから、秒速30万kmです。つまり、5万(距離)÷30万(速さ)=約0.17(時間)になり、時間は、1秒ではなく、まだ約0.17秒しか経っていません。
すなわち、光の速度を観測する場合、静止している人の1秒は、秒速25万kmの宇宙船に乗っている人には約0.17秒になります。これは、宇宙船に乗っている人の時間の流れが遅くなることを示しています。このように、時間の流れ方は、絶対的なものではなく、速度によって異なる相対的なものになります。
そして、宇宙船の速度が光速に近づくほど、その宇宙船に乗っている人の時間の流れは、さらに遅くなります。これが、光速度不変の原理における時間の相対性です。また、光速に近い宇宙船では、時間がゆっくりと流れるだけでなく、その宇宙船から外を見ると、空間が縮んで見えます。
特殊相対性理論では、時間と空間を一体のものとして、時間(1次元)と空間(3次元)から成り立っている時空(4次元)の世界を考える必要があります。そして、この考えは、一般相対性理論の構築においても重要な要素になります。
時間の相対性によると、仮に光の速さに近い宇宙船で旅行して、地球に数年後に帰ってきたとき、宇宙船内の時間の流れは遅くなるため、地球では何十年もの時が経っていることになるよ!
また、光速度不変の原理から次のような結論が導き出されるよ!「光速に到達すると、時間は止まる。」「光速は最速であり、光速を超えることはできない。」
そして、特殊相対性理論では、静止している人が、光速近くで移動している物体を見ると、その物体は短く見えるんだ!これはローレンツ収縮と言われているよ!
特殊相対性理論の公式(E=mc²)
E=mc²は、質量(m)に光速(c)の2乗をかけたものがエネルギー(E)になるという公式です。これは、質量とエネルギーが同じ価値を持つことを表しています。これを質量とエネルギーの等価関係と言います。また、この公式は、光速の2乗という極めて大きな値を質量にかけることから、わずかな質量でも、膨大なエネルギーが生じることを示しています。
すなわち、この公式は、光速に近づいた物体を加速させるため、さらにエネルギーを加えると、加えたエネルギーは質量(動きにくさ)に置き換わることを意味します。そのため、エネルギーをさらに加えても、光速を超えることはありません。それは光速が最速だからです。
また、この公式は、核分裂反応によって生じるエネルギーが、質量に光速の2乗をかけたものになることを示しています。これは、質量とエネルギーの等価関係に基づき、核分裂反応によって質量が減った分すべてが、エネルギーに置き換わることを意味しています。
そして、光速は3.0×108[m/s]という非常に大きな値です。さらに2乗すると、極めて大きな値となります。つまり、核分裂反応によって、原子核の外部に放出されるエネルギーは極めて膨大なものになります。
一般相対性理論と等価原理
一般相対性理論とは、特殊相対性理論に重力の影響を加味したものです。そして、一般相対性理論は、「等価原理」を基礎としている考え方です。等価原理とは、同じ物体の重力質量と慣性質量が同一ということです。
例えば、電車が発進するとき、乗っている人が、進行方向とは逆向きの方向によろけることがあります。この時に働く力を慣性力と言います。すなわち、電車が進行する方向に運動します。これに対して、乗っている人はその場にとどまろうとします。
そのため、乗っている人には進行方向とは逆向きの力が働きます。これを見かけの力と言います。このように、慣性によって働く見かけの力を慣性力と言います。そして、一般相対性理論では、この慣性力と重力が同じ値であると考えます。
また、一般相対性理論では、質量を持つすべての物体は、周りの空間を曲げ、空間の曲がりそのものが重力であると考えられています。質量とは、物体が有している物質のそのものの量のことで、物質の動きにくさの度合いのことです。つまり、質量とは慣性の大きさのことです。
すなわち、質量が大きくなると、空間の曲がり具合は大きくなり、重力は強く働きます。そして、一般相対性理論は、重力が、空間と光を曲げるとともに、時間を遅らせるという現象を起こすことも明らかにしました。
これをわかりやすく説明します。テーブルクロスのような布の四方の角を引っ張り、布を張った状態で浮かします。これを宇宙空間に例えます。この上にボールのような球体を置きます。これを星に例えます。球体の置かれたところにはへこみができます。このへこみが空間の曲がりです。
そして、それが重力ということになります。重力によって空間が曲がっているところでは、布のへこみのように、空間の長さが伸びています。そのため、光は、その分長い距離を進むことになり、曲がっていない(重力のない)ところに比べて、時間がかかります。すなわち、重力のあるところは、時間の流れが遅くなります。
ちなみに、非常に強力な重力が働くブラックホールでは、世の中で最速の光さえも吸い込まれてしまいます。そして、ブラックホール周辺では、時間が止まっていると考えられています。
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