APECの概要
APEC(Asia Pacific Economic Cooperation)とは、アジア太平洋経済協力のことです。太平洋を取り囲む21か国と地域が参加している経済協力の枠組みです。
APECのメンバーは、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、タイ、米国、ベトナム、香港(ホンコン・チャイナ)、台湾(チャイニーズ・タイペイ)です。
APECメンバーは「エコノミー」と呼ばれ、その全体のGDP(国内総生産)は世界のGDPの約6割を占めています。事務局はシンガポールにあります。APECは、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易や投資の自由化及び円滑化、経済及び技術の協力の推進について連携していくことを目的としています。
また、APECは、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想(APECメンバーによる自由貿易圏の形成)を目指しています。産業界との連携を重視し、加盟各国・地域の産業界の代表から首脳に提言する「APECビジネス諮問委員会」があります。ビジネスを活発にするため、ビジネス目的での加盟国・地域への入国等は原則的に査証(ビザ)を免除する仕組みも導入されました。
APECの経緯
1989年、アジア太平洋地域における多国間の経済協力を討議することを目的として、オーストラリアで開催された第1回閣僚会議でAPECは発足しました。当初は、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、米国、カナダに加えて、ASEAN6か国のインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、マレーシアという12か国でした。
1990年にシンガポール、1991年に韓国、1992年にタイで開催されました。
1991年から中国、香港、台湾がAPECに参加しました。
1993年、米国で初めてAPEC首脳会議が開催されました。この時、パプアニューギニアとメキシコが参加しました。
1994年、インドネシアで開催されました。「ボゴール宣言(APEC経済首脳の共通の決意の宣言)」が採択されました。同宣言では、アジア太平洋地域において2020年(先進国は2010年)までに貿易と投資の自由化及び円滑化を達成すること等を掲げました。また、この時、チリがAPECに参加しました。
1995年、日本で開催されました。長期的目標に至る道筋を示す「大阪行動指針」が採択されました。同指針は、ボゴール目標を達成するための道筋を示したもので、「自由化及び円滑化」と「経済・技術協力」の2部で構成されています。
1996年にフィリピン、1997年にカナダで開催されました。
1998年、マレーシアで開催されました。ロシア、べトナム、ペルーが参加しました。
これで、現在のAPECメンバーである21か国と地域が参加することになったよ!
1999年、ニュージーランドで開催されました。アジア通貨危機から脱したことを歓迎して、危機の再発を防止するとともに、持続的な成長を確保するため、APECとして努力することを決意しました。
2000年以降も、毎年、メンバーによる閣僚及び首脳のAPEC会議が開催されました。
2014年、中国で開催されました。APECの25周年を記念して「アジア太平洋パートナーシップを通じた未来の形成」という声明を発しました。また、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向けたAPECの貢献のための北京ロードマップ」が承認され、「FTAAP実現に関連する課題にかかる共同の戦略的研究」を開始することを合意しました。
2015年以降も、毎年、メンバーによる閣僚及び首脳のAPEC会議が開催されました。
2020年、マレーシアAPECがオンラインで開催されました。2017年以来3年ぶりに、首脳宣言が採択されました。
また、ボゴール目標(1994~2020)のAPECの方向性を示す文書である「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」が採択されました。そこには、「全ての人々と未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体とする」というビジョンを実現することが掲げられました。
2021年、ニュージーランドAPECがオンラインで開催されました。首脳会議では、ニュージーランドが掲げた、「共に参加し、共に取り組み、共に成長する」というテーマの下、全ての人々及び将来の世代の繁栄に向けた新型コロナからの回復について議論が行われました。
議論の総括として首脳宣言が採択されました。さらに、「アオテアロア行動計画」が採択されました。この行動計画は、「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」を実施するための具体策が盛り込まれ、「2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体とする」というビジョンの実現を目指します。
2022年、タイで開催されました。首脳会議では、タイが掲げた、「オープン、コネクト、バランス」というテーマの下、コロナ後のアジア太平洋地域の回復や包摂的かつ持続可能な成長について議論が行われました。議論の総括として首脳宣言が採択されました。
首脳宣言では、ロシアによるウクライナ軍事侵攻について、「世界経済にさらなる悪影響を与えていることを目の当たりにした」「ウクライナでの戦争についてほとんどのメンバーが強く非難した」と明記しました。一方、ロシアに対する経済制裁などについては「ほかの見解や異なる評価があった」とも明記しました。
また、首脳会議では、アジア太平洋地域の持続可能な成長に関する「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標」が承認されました。
2023年11月、米国で開催されました。「全ての人々にとって強靱で持続可能な未来を創造」というテーマの下、「相互連結」「革新的」「包摂的」の3つが優先課題とされました。議論の総括として首脳宣言が採択されました。
首脳宣言(ゴールデンゲート宣言)には、気候変動などの新たな課題及びそれに対処する革新的な方法を認識したこと、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性がある、包摂的かつ予見可能な貿易及び投資環境の実現に向けて協働すること、WTOの全ての機能の改善に必要な改革にコミットすること、開かれた市場を維持し、サプライチェーンの混乱に対処するコミットメントを再確認すること、
低・ゼロ排出車両への移行、持続可能な航空燃料、低・ゼロ排出海運及び港湾の脱炭素化を加速すること、食料安全保障と栄養を確保する取組を強化していくこと、汚職が経済成長及び開発にもたらす深刻な影響を認識し、国境を越え共同して汚職と闘い、汚職犯罪者と不正な資産に対する安全な避難所を拒否すること、などが盛り込まれました。
また、議長声明には、ウクライナにおける戦争の悪影響に深い懸念をもって留意し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていること、ガザにおいて現在進行中の危機について意見交換を行ったこと、米国を含む首脳は、それぞれの立場を共有したこと、などが明記されました。
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