ヨモギとは
ヨモギ(蓬)の葉を見れば、誰でも知っている雑草だと思う人は多いかもしれません。ヨモギは畦道(あぜみち)、野原、河原、時には道端などの雑草が生えているところなら、よく見かける植物です。ヨモギは、キク科ヨモギ属に分類される多年草で、日本全国において春に咲くタンポポなどと一緒にその若葉を見ることができます。ヨモギの葉はキクの葉のようにギザギザですが、葉の色は菊の葉よりも薄い緑色です。そして、葉の裏は綿毛が付いているため、白っぽくなっています。
葉の感触は柔らかく、手で揉むと独特の香りがします。ヨモギの茎には細かい毛がたくさん生えています。8月~10月にヨモギは小さな花をたくさん咲かせます。ヨモギは地下茎という茎が地中で横に広がります。そして、そこから根をはり、芽を出して繁殖します。このように、ヨモギは、土の中に茎と根を張り巡らすため、枯れても、翌年の春にはそこから新芽を出して成長します。そのため、ヨモギは、引き抜くのが難しい植物で、踏みつぶされても、へこたれず、まさに雑草の生命力を持つ植物です。
ヨモギの種類
ヨモギは世界で約500種類あると言われています。日本では30種類以上が自生しているそうです。しかし、ヨモギ属は、交雑などによって変異することが多いため、正確に分類することは難しい植物です。日本で自生しているヨモギには、主にオオヨモギ、カワラヨモギ、カズザキヨモギ、ニシヨモギという種類があります。オオヨモギはヤマヨモギ又はエゾヨモギとも呼ばれます。北海道から本州の近畿地方までの山地に多く自生しています。


その名のとおり、一般的なヨモギよりも大きく、草丈は2メートルくらいまで伸び、葉も長い形をしています。カワラヨモギは本州、四国、九州、沖縄の河岸や海岸の砂地に多く見られます。葉はコスモスの葉のように細長く茎は30センチメートル~1メートルくらいになります。カズザキヨモギは一般的によく見かけるヨモギのことです。本州、九州、小笠原などに分布しています。草丈は50センチメートル~1メートルくらいになります。ニシヨモギは本州の関東地方から沖縄にかけて分布しています。草丈は30センチメートル~1メートルくらいで、大き目の葉をつけます。


ヨモギの利用
ヨモギは、ヨーロッパでは「ハーブの母」又は「ハーブの女王」と呼ばれて、万能の薬草として親しまれてきました。特に、婦人病の改善に効果がある薬草としても利用されてきました。古代ローマ時代には、小麦粉などにヨモギを練り込んで焼いたパンが食べられていました。また、ヨモギをアルコールに漬け込んだヨモギ酒も薬酒として古くから親しまれてきました。日本では、平安時代からヨモギを薬草として利用してきました。傷や虫刺されなどには生の葉の汁を塗ったり、下痢や便秘などには煎じて飲んだりしたそうです。
また、当時の中国では、3月3日の上巳(じょうし)の節句には、邪気を払うとして、キク科の母子草(ははこぐさ)を練り込んだ草餅を食べる風習がありました。そして、これが平安時代に日本にも伝えられました。日本では桃の節句(ひな祭り)と呼ばれてきました。一方、母子草を餅に練り込むのは母と子をつく(潰す)ことになるため、縁起が悪いとして、ヨモギに変えた草餅(蓬餅)を食べるようになりました。江戸時代にはヨモギが広く用いられるようになりました。
さらに、5月5日の端午の節句でもヨモギの草餅を食べる風習が根づきました。端午の節句は菖蒲(しょうぶ)の節句とも呼ばれています。江戸時代に菖蒲が勝負と重なり、男子の節句とされました。そして、兜や武者人形を飾るようになりました。現在、5月5日は「こどもの日」として祝日になっています。その日には、男の子の成長を願ったり、子供たちの健康をお祝いしたりして、柏餅(かしわもち)や笹の葉で巻いた粽(ちまき)を食べたり、特に新潟では笹団子を食べたりします。


柏は新しい葉が生えないと、古い葉が落ちないことから跡継ぎが絶えないという意味が込められています。そして、柏餅や笹団子には餡(あん)が入った蓬餅が使われてきました。この風習は現在も続いています。ヨモギの旬は春先の3月~5月です。スーパーやデパートの和菓子コーナーでは、餡を包んだ草餅や餡をのせた団子などのヨモギ入り和菓子が売られています。また、ヨモギは乾燥させることで生薬の艾葉(がいよう)になります。

漢方としては体の中から温めたり、出血を止めたり、痛みを和らげたりするために利用されます。ヨモギの葉の裏にある綿毛は、火をつけても、炎があがらずにゆっくり燃えるので、お灸に使うモグサとして用いられています。そのほか、ヨモギは菖蒲のように入浴剤としても使われてきました。沖縄では、ヨモギ(ニシヨモギ)はフーチ(病気)を癒すバー(葉)と呼ばれて、薬草として家庭で広く利用されてきました。そして、「フーチバー酒」という泡盛にヨモギを漬け込んだ伝統的な飲み物もあります。
それは、胃腸の調子を整えたりする薬酒として家庭でも手作りされます。また、沖縄では1年を通してヨモギが収穫されるので、料理に混ぜたり、薬味にしたりして利用されています。このような昔からの利用方法のほか、天日干しにしたヨモギの葉でお茶を楽しむことができます。ヨモギの料理としては、おひたしにしたり、スープに入れたり、炒め物や天ぷらにしたりすることもできます。また、クッキーなどのスイーツやパンの生地に練り込むこともできます。
ヨモギの栄養素
ヨモギには、クロロフィル(葉緑素)、β-カロチン(体内でビタミンAに変換)、ビタミンK、ビタミンB2、カリウム、カルシウム、鉄分、食物繊維が豊富に含まれている緑黄色野菜です。
クロロフィルの効能
クロロフィルは、植物に含まれる緑色の色素成分で、光合成を行う際に重要な役割を果たしています。このクロロフィルには抗酸化作用があります。体内で取り込まれた酸素が、化学反応を起こすことによって活性酸素が生じます。活性酸素にはウイルスや細菌などの感染を防ぐ働きがあります。しかし、体内で活性酸素が過剰に発生すると、細胞や遺伝子を酸化させる(傷つける)ことになります。それは皮膚などの老化や生活習慣病などの原因にもなります。
抗酸化作用とはこの活性酸素を除去する働きのことです。すなわち、抗酸化作用は、シミやシワなどの肌の老化、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、がん、糖尿病などのリスクを減らすことになります。また、クロロフィルには、血液中のコレステロール(脂質)の値を下げる効果があります。血液中にコレストロールが多く含まれる状態が続くと、血管の壁に余分な脂が沈着して、プラークという塊ができます。それが血管の壁を厚くするため、血管が詰まりやすくなります。

また、プラークが破れると、それを修復するため、血小板が付着して固まるので、血栓ができます。この血栓が動脈で詰まると、脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こすことになります。すなわち、クロロフィルはこれらの疾患を予防する効果が期待できます。さらに、クロロフィルは、「緑の血液」とも呼ばれ、人の血液のヘモグロビンと似た構造をしています。そのため、体内に吸収されると、血液中で鉄と結合して造血機能を助けます。すなわち、貧血を予防したり、改善したりする働きがあります。
β-カロテンの効能
β-カロテンにも抗酸化作用があります。そして、β-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。ビタミンAは目の健康に必要な栄養素です。そのため、夜盲症(夜などの暗い場所で見えづらくなる病気)を予防したり、視力の低下を抑えたりする働きがあります。また、ビタミンAには粘膜を丈夫にする働きがあります。粘膜は、呼吸器や消化器など様々な器官の内側の表面にあります。この膜からは粘液が分泌されて、粘液層がつくられるため、体内にウイルスなどが侵入するのを防止します。さらに、ビタミンAは、皮膚の新陳代謝を高めて、皮膚の健康を維持するため、肌の荒れや乾燥を防ぐ働きもします。
ビタミンKの効能
ビタミンKは、カルシウムを骨に沈着させて、丈夫な骨をつくる働きがあります。すなわち、骨粗しょう症を予防する効果が期待できます。また、ビタミンKは、肝臓で血液凝固因子を生成するのを助ける補酵素としての役割も果たしています。すなわち、止血を助ける働きがあります。
ビタミンB2の効能
ビタミンB2は、水溶性ビタミンで、糖質、タンパク質、脂質の代謝やエネルギー産生に関与する酸化還元酵素の補酵素としての役割があります。特に、脂質の代謝に深く関与しています。すなわち、脂質を分解してエネルギーに変えるため、脂っこい食べ物が好きな人や体の脂質を減らしたい人には必要な栄養素です。また、ビタミンB2は、皮膚、粘膜、毛髪、爪などの細胞を再生する働きに関与しています。

そして、「発育のビタミン」とも呼ばれ、発育促進に重要な役割を果たしています。そのため、成長期の子供にとって欠かせない栄養素です。さらに、過酸化脂質(体内で活性酸素によって酸化された脂質)を分解して体外に排出する働きがあります。すなわち、過酸化脂質の蓄積によって引き起こされる老化やがんなどの生活習慣病のリスクを下げる効果が期待されます。
カリウムの効能
カリウムはほとんどが体の細胞内に含まれています。そして、細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ働きがあります。すなわち、カリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として体外に排出して、体内の塩分濃度を一定に保つ働きがあります。塩分を過剰に摂ると、塩分濃度を下げるため、体内に水分を溜め込みます。その結果、体にむくみが生じたり、血液量が増加して血管への圧力が高まり、高血圧を引き起こしたりします。カリウムはこれらの症状を防いだり、抑えたりする効果が期待できます。
また、カリウムは、神経の伝達機能や筋肉の収縮にも関与しています。そのため、カリウムが不足すると、脱力感、食欲不振、不整脈などの症状が出ることがあります。すなわち、心臓を含む体の筋肉が正常に動くためにはカリウムが欠かせません。さらに、カリウムは、体液のpHバランスを保つために必要なミネラルです。正常の体液のpH値は7.0~7.4で弱アルカリ性です。しかし、肉類や菓子類などの酸性食品ばかり食べ続けると、pH値が酸性に傾きます。その結果、だるさ、息切れ、吐き気などの体の不調が現れます。
カルシウムの効能
体内のほとんどのカルシウムは歯や骨に含まれています。そのため、健康で強い歯や骨をつくるためには欠かせないミネラルです。カルシウム不足が続くと、骨からカルシウムが血液中に溶け出します。それにより、血液中のカルシウム濃度が上がりすぎることがあります。その結果、血管の壁に付着して動脈硬化や高血圧を引き起こしたり、すい臓の細胞に付着してインスリンの分泌を妨げたりします。

そして、カルシウムが溶け出した骨は骨粗しょう症になるリスクが高まります。すなわち、カルシウムの摂取は生活習慣病を予防するためにも必要な栄養素です。また、カルシウムは、筋肉を収縮させたり、神経を安定させたりする働きがあります。さらに、血液の凝固を促進する働きにも関与しています。
鉄分の効能
鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分です。赤血球はヘモグロビンの働きによって全身に酸素を運んでいます。そのため、鉄分が不足すると、体内における酸素の供給量が不十分となって、鉄欠乏性貧血を引き起こす原因となります。その結果、集中力の低下、頭痛、食欲不振などの症状が現れます。また、鉄分は、様々な酵素の構成要素ともなっているので、体の機能を正常に働かすためにも必要なミネラルです。
食物繊維の効能
食物繊維が豊富なヨモギには水溶性(水に溶ける)と不溶性(水に溶けない)の食物繊維が含まれていますが、不溶性が多く含まれています。不溶性食物繊維は、消化・吸収されずに大腸まで到達します。そして、粘膜を刺激して水分や粘液の分泌を促したり、便のかさを増やしたり、便をやわらかくしたりする働きあります。そのため、便通を良くして便秘を解消します。また、腸内で不要な老廃物や有害物質を吸着して、体外に排出したり、善玉菌のエサとなって善玉菌を活性化させたりするため、腸内環境改善に役立ちます。






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